北海道はかなり寒くなってきました。
みなさまお住まいの地域はいかがでしょうか。
ここ数年、白鳥の声を聞くと「冬が近づいたな~」と感じるようになりました。
けっこう響いて大きな声なので、子供のころから聞いているはずなんですが、あまり意識したことがなかったように思います。
このように同じ事柄でも、自分の心の状態次第で違った見え方・感じ方をすることがあります。
年を取ったからともいえますが、年を重ねて成長したというのも、子供の心から大人の見方へと心の状態が変化したということです。
私たちは自分が見るもの感じるものすべてに、自分の感情を映し出しています。
これを心理学における『投影』といいます。
私と白鳥の話に置きかえてみると、
休日にのんびりとしながら白鳥の声を聞けば、「今年も遠い所から飛んできて、がんばったなぁ」と思います。
自分が家事を終わらせて余裕があるので、白鳥に対してもねぎらいの気持ちになるのです。
それがもし、体調が悪くて少しでも寝ていたい平日の早朝だとしたら、元気な白鳥の声は眠りを妨げるイラつく存在です。
「あなたたち(白鳥)は渋滞とかないんだから、もっと遅い時間に飛びなさいよ!」と仕事に行きたくない気持ちが白鳥への八つ当たりになります。
どちらも鳥が飛んで鳴いているだけなのに、聞いている人の気持ち次第で、『季節を告げる鳥』や『安眠妨害の鳥』となるのです。
人間関係においても、投影という視点はかかせません。
自分の心の状態次第で、相手が嫌な人に見えたり、なぜか安心できると感じたり。
私は今でこそ、職場の人間関係が楽で何の悩みもないのですが、何度も転職をしてきた理由で一番多かったのは人間関係によるものでした。
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私が新卒で入社したとき、教育係の先輩にほめられたんです。
「あなたは分からないところをすぐ聞いてくれるから、教えやすくて助かるよ」
そんなふうに言っていただきました。
その会社では人間関係の問題はなかったのですが、結婚のため退職。
出産後に別の会社で働き始めました。
私は前職で経験したように『わからないところを聞くことがいいこと』と思っていましたから、同じようにいろんな場面でA先輩に質問をしました。
(このように過去の出来事ややり取りをもとにした言動も、過去の投影です。)
質問がちょっと多かったのかもしれません。
A先輩に「この仕事、まだ覚えていないの?」と言われてしまいました。
当時の私は、わからないことを聞くことが悪いとは少しも思っていなかったので、言われた言葉の意味をそのまま受け取り、笑顔で「はい!!」と答えました。
たぶんイラっとさせてしまったんでしょう・・
仕事を教えてもらえなくなり、やっと気づきました。
前の先輩や状況と、同じではないんだ!
違う職場の違う相手だと頭ではわかっているのに、相手に合わせることなく以前と同じような言動をしてしまっていたのです。
ショックを受けて質問することが怖くなってしまった私は、間違いが多くなり、声が出なくなるほどのストレスを抱えて退職しました。
当時はA先輩のせいだと思っていましたが、今考えるとそれだけではなかったのかもしれません。
嫌味を言われたことがきっかけだったのは確かですが、「質問が怖い」のは私自身の心の状態だと思うのです。
なぜなら、そのA先輩より後から入社した年下のB先輩が、A先輩より上の立場になってうまくやっていたからです。年下という立場でも、そのA先輩といい関係性を築ける人もいたということ。
ただもしかしたらそのA先輩は、自分より年下のB先輩に役職を越された経験があったために、私に対して『自分の立場をおびやかされる』と過去を投影していた可能性もあります。
自分も投影をしますが、相手も無意識に投影をするからです。
見えている関係性だけではない心のかけ引きが、自分の意識していないところで行われていることもあるということです。
こういうことは特別なことではなく、どんな関係性でも起こり得ます。
どこに行っても合わない人の一人や二人はいたりしますし、たいてい一緒に働いてみないとわかりません。
奇跡的にいい人ばかりの職場だったとしても、その状況が定年まで続くかどうかもわかりません。
仕事だけではなく、そのほかの人間関係においても、自分の望むような心地のいい場所がずっと続くほうが少ないように思います。
そのたびに環境を変えることができればいいのですが、そうもいかないから悩むんですよね。
それでも自分で変えられる部分があるとしたら『どう感じるか』だと思います。
その感じ方を広げるために使えるのが、『投影』を使った視点です。
自分の言動というのは、過去に学んだことをベースに応用しています。
でもそのベースは、自分の体験をもとにしているので(投影)、周りの人と同じではなかったり、通用しないこともあります。
まず自分は物ごとや人にどんな投影をしているのか。
気付くことができれば、「よくわからないけれどつらい」ということが減るかもしれません。
私の話を例にしますが、そもそもなぜわからないことをすぐ聞くようにしていたかというと、『間違ってはいけない』と強く思っていたからです。
もう一つ、『努力する意欲を見せなければいけない』とも思っていました。
なぜそういう意識を持つようになったか、記憶をたどっていくと、子供時代に母から受けた教育によるものだったかもしれません。
年上の女性に対して母を無自覚に投影していたように思います。
意欲を見せることは母には有効でしたがA先輩には通用しなかったんですね。
そこで先輩への態度や関わり方を変えればよかったのかもしれませんが、当時の私は『間違ってはいけない』『意欲を見せなければいけない』この二つを、質問ができないことによって封じられてしまったと感じたのです。
自分ができることすべてを封じられてしまったから、もう何もできないという思い込みです。
自覚できる意識としては、この先輩が仕事を教えてくれないから、嫌がらせをされるから私は苦しい、そう思っているのですが。
よくよく自分のパターンを振り返ると、間違う自分や意欲のない自分、何もできない自分は、ただもう罪人のようにお叱りを受けるしかない、と自分を責めていました。
誰かに相談してもよかったし、怖がる自分を責める必要もなかったように思います。
もし今の自分が当時の自分にアドバイスができるとしたら、
「相手も自分も完璧な人はいないのだから、自分を責めなくていいよ」
そう言ってあげたい。
相手の行動を変えられないとわかっていても、理不尽な扱いを受ければつらいし、怖くもあります。
追い打ちをかけるように、そのつらさや苦しさに自分を責める気持ちを上乗せする必要はありません。
つらいことがあるとき、状況をかえたいがために、理由や原因を探しますよね。
悪いことではありませんし、自分が変わることで状況が好転することもあると思います。
でも、「自分が変われば周りも変わるんだ。自分がまだまだだから、状況が変わらないんだ」と自分を責めるのは、自分を苦しめるだけなんです。
相手がいる問題は、半分は相手の問題でもあり、相手は変わらないかもしれません。
それなのに、いつも自分が悪いのかもと、何とか改善しようと一人でがんばってしまう方がどれほど多いことか・・
とても消耗してしまいますよね。
こういった自分の状況を周りにも投影しますので、自分が自分を責めている分だけ、こんなにつらいのにとイライラしたり相手を責めたくなります。
ネガティブな気分は当然相手にも伝わりますから、関係がよくなりにくいように思います。
つまり自分を責めて良い結果になることはないんですね。
逆の視点で見ると、相手を責めてイライラしている時は、自分を責めているということでもあります。
ややこしいですよね。
このように「投影」というものの見方を使うと、思考で認識していなかった自分の感情や状態を知ることができるのです。
日常的に「投影」を意識する必要はないかもしれませんが、もし人間関係に問題を抱えているのなら、自分は何を投影しているのかに注目してみてもいいかもしれません。
よくわからないときはお気軽におたずねくださいね。