養育費をもらうと決めるのに10年かかりました①~離婚と子供について〜

(このお話は私の友人に起きたことであり、本人の希望により掲載しています。プライバシーを守るためあいまいな表現を使うこともありますが、ご了承ください)

先日、仲の良い友人と話す機会がありました。

友人はいわゆるママ友で、私と同じシングルマザーであり子供同士の年齢も近いので、日ごろから悩みや情報を共有しています。

その友人(Aさんとします)は、私がカウンセラーをしていることも知っていますので、これまでも心理学の視点を交えてお話しすることが多くありました。

去年の年末にAさんと会った時、彼女の息子くんが学校に行けていない、その原因がAさん曰く、息子くんの父親が関わる養育費問題であるとの話でした。

『自分の周りにはいないけれど、同じような悩みを抱えている方もいるのではないか』という話題になり、できるならばわかりやすくまとめて発信してほしいと言ってもらいました。
なぜかというと、彼女なりにいろいろネットで調べても、自分のようなケースはほとんど検索できなかったそうです。

これから離婚をする際の養育費の取り決め方法や金額などは検索に出てきても、何年もたってからの請求事例はほとんど出てこなかったと言っていました。

私も似たような経験をしていますので、この経験が誰かの役に立つのなら、という気持ちはわかります。

Aさんの問題はまだ解決していないため試行錯誤状態なのですが、過ぎてしまうと当事者としての気持ちが薄れてしまうから、現実と同時進行でまとめていこうと話し合いました。

誰かを誹謗中傷するためではなく、どなたかの参考になればという想いを基本としてお伝えしたいと思います。
一部偏った表現があるかもしれませんが、当事者であるAさん視点からのお話ですのでご了承ください。

+++なぜ養育費を請求してこなかったのか+++

「まりちゃん、私ね10年前に離婚したと思ってたんだけど、終わってなかったみたい」
 「ん??何かあったの?」
「高2の息子がね、今学校行けてないんだよ…」
 「大問題だよ!なんで?学校で何かあったの?」
「学校は楽しく通っていて、進学希望だから行きたい大学も決めてたんだけど、10年前に離婚した元夫が、進学の補助はしたくないって息子に伝えたらしくて。それがショックだったみたいなんだよね」
  「・・それはショックだよ。息子くんが頑張って勉強しても進学できないっていうことになるんでしょ?」
「受かれば進学はできるよ、経済的な問題はそんなになくて。…じつは今まで養育費無しで困ったことはないの。だけど大学進学にあたって、元夫が親として何もしないのは今後の息子の気持ちとしてどうなんだろうと思って。この機会に援助してほしいと話してみたら?って息子に伝えてみたんだよ」
 「うん、そうだよね。子供が進学するのに、お母さん一人で何とかなるから頑張るという話ではないよね。お父さんからの支援もあれば、息子くんの気持ち的にも安心だし。だけどどうして今まで養育費を請求しなかったの?」
「離婚をした時に全て終わりにしたかったから。私と元夫どちらが悪いとか正しいとか、そんな争いから解放された!!この自由の他に何もいらないとあの時は思ったの」
「経済的には自立していたし、でも今思えば、あまりの開放感にちょっとおかしくなっていたのかも…。養育費は子供のためだと割り切って、最初から請求したらよかった」

Aさんの気持ちがよくわかりました。

最悪の状況に慣れきってしまうと、少しの状況改善がまるで天国のように感じることがあります。


私も離婚をしていますが、同じような状況にあったため養育費をもらおうという気持ちが起きませんでした。
子供たちにお金のことで両親が争う姿を見せたくないと思いましたし、本人たちが好きな時に父親に会えばいいと考えていましたので、離婚調停もしませんでした。
私としては養育費をもらっていない状況を、いいことのようにとらえていたのです。

もらっていないということは、干渉されることもないということだと勝手に考えていました。
もし裁判にでもなったらまた元夫と関わらなければならない、もうそっとしておきたい。

元夫に頼らず自分の手で育てている、それが私のプライドでもあったのですが、その頃の自分に物申したい。
養育費は、子どものために請求した方がいい!!

「養育費って、単なるお金の問題ではないんだね。そのことに10年も経ってやっと気付いたよ」
同じ母として親として、Aさんと私は共感しあいました。

+++Aさんの息子くんの登校拒否+++

 「息子くんと元旦那さんとの交流はけっこうあるの?」
「毎年何度も会ってるし、泊まったりしてるよ。だから、お正月に息子から進学補助を頼んでみたらどうかと思ったの。息子も『出してくれると思う!』って信頼している様子だった」
 「でも断られたんだよね?なんで??」
「息子から聞いた話で、元夫とやりとりはしていないから何とも言えないんだけど…」

Aさんの話を要約すると、進学時の仕送りをする意思はあるけれどAさんに対して元旦那さん的に気持ちのわだかまりがあり、そのせいで払いたくないといった内容でした。

話を聞いて正直私は怒りを覚えました。

 「進学費用は子供に対するものでしょ?親同士のもめごとは子供に関係ないよね?直接息子くんに渡せばいいだけじゃない!」
「私もそう思うんだけど。一番の問題はね、払う払わないじゃなくて、ショックを受けた息子が学校に行く意欲をなくしちゃったことなの」
 「たしかに…。息子くんは学校に行かないと大学推薦も受験もできないこと、わかってても学校に行けないほどショックを受けたんだね」
「進学については何度も息子と話したし、本人も状況をわかってるんだけど、毎朝ベッドから起き上がれないの。病院に行ったらね、病名がついていて…うつの疑いだって。これからどうなるんだろう・・」

Aさんからは本当に途方に暮れている様子が伝わりました。

「苦しんでいる子供のために何ができるんだろう。心配で焦ってしまって、厳しいことを言って落ち込むんだけど。どうしていいのかわからなくて」
 「Aさん、自分を責めちゃうんだね。それもわかるけど、心も体も成人に近い男の子をむりやり登校させることはできないよ」 
「だけど私がよけいな提案をしなければ、こんなことにはならなかったように思えて・・」
 「私も似たような状況になったことがあるし、自分の何が悪かったのかと同じように悩んだよ。でもね、悪いことばかりじゃないかもしれないと考えるようにしたんだ」
「そう?私にとってはこれ以上ないくらい悪いことだよ。ずっと一人で育ててきたのに、育ててもいないし費用も出してない元夫に息子の将来をめちゃくちゃにされて」
「私がどんなに頑張って一人で育てても、息子にとって私も元夫も親として大差ないなんて。やってられない!」

Aさんも息子くんも、自分の価値に疑いを持っているようでした。
Aさんはこれまで誰の援助もなく必死で子育てをしてきたのに、父親による一度の言動で、子供の今までの積み重ねがひっくり返されてしまったと感じていました。
息子くんは、大好きな父親が優先したのは息子くんの将来ではなかったということに、自分という存在はどうでもいいものなのではないかと思っているとのことでした。

一方通行でものすごくつらい話ですが、見えていることだけがお互いの本心ではないとも感じました。

 「でも思うんだけど。こうして息子くんが登校拒否できるのは、Aさんとの生活に安心を感じているからじゃないかな?」
「なんで??だって、私もイライラしちゃうから、息子を責めてしまうんだよ?全然安全なんかじゃないよ」
 「言葉で責めたとしても、身体感覚として安全だとよくわかっていると思うよ。逆らえない、聞き入れてくれない相手に「NO」と伝えるのは本当に難しいことだから。学校を休んでいられるのは、今の環境が安全だからなんじゃないかな」

そう言われてもなかなか親として納得はできないんです。
大事にしてきたからこそ、もろくも壊れてしまったと感じて周りも自分も許せない。
自分が傷ついてしまうと、傷ついた人を受け入れにくくなります。

 「あのね、Aさんは息子くんを大事にしてきたよ。それは息子くんも周りの人もみんな知ってる。厳しいことを言うけど、自分を責めるのは自己満足で誰のことも幸せにしないと思う」

では親にできることは何なのか。

親の在り方も千差万別なら子もまたしかり。
何が正解とは言えませんが。
しいて言うなら、そうやって悩むことが愛情の証だと思います。
親としての愛情が足りなかったと、後悔に時間をとるのはもったいない。

 「どうしても期待はしてしまうだろうけど、今の息子くんをそのまま見てあげるしかないよね」

子供の状態をそのまま感じるためには、親もまた自分の心の状態をそのまま感じる必要があります。
親が苦しい気持ちを抑えたなら、子供もまた抑えることがいいことだと思うでしょう。
親が自分のせいだと自分を責めたなら、子供もその親を見て自分のせいだと責めるかもしれません。

そのままを見ることが、どれだけ難しいのかはやってみた人にしかわからない。
私だって思うようにはできません。
でもその目線や努力は伝わると思っています。
特に自分を疑ってしまうような、感受性の高い子供には言葉以外でも伝わることはたくさんあります。
なぜなら、いつも子供は自ら親のことを感じようとしているからです。
親の感情に注目するあまり、自分の感情は後回しにしてしまい、どうしたらいいのかわからなくなることがあるのです。
それでも、親の気持ちが子供へ向かっているのか、理解されていないのかは感じ取っていると思います。

(養育費をもらうと決めるのに10年かかりました②へ続きます)
 

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